監査報告書 II
Audit Reporting II
🦉 Episode 4: クライアントとの衝突
ある日の午後、カイロウはクライアント企業の会議室で緊迫した空気を感じていた。
経理部長が腕を組んで言った。
「この減損は認めません。業績は来期回復する見込みです」
先輩は冷静に資料を示しながら応じた。
💼「お気持ちは分かります。しかし、現時点の客観的な証拠に基づくと、この資産の回収可能性には重大な疑義があります。GAAP(会計基準)に照らして、減損処理が必要だと判断しています」
「監査人の見解として承りますが、うちとしては計上しない方針です」
会議が終わり、廊下に出たカイロウは先輩に小声で聞いた。
🦉「先輩……クライアントが言うこと聞いてくれなかったら、どうなるんですか?」
💼「僕たちにできるのは、監査報告書で意見を変えることだ」
事務所に戻り、先輩はホワイトボードの前に立った。
💼「前回学んだ無限定適正意見は、問題がないときの意見だ。でも問題があるときは、3つの選択肢がある」
先輩はマーカーで書き始めた。
💼「まず限定意見(Qualified Opinion)。『この部分を除けば、全体としては適正です』というもの。GAAPからの逸脱が重要だけど、決算書全体に広がっていない(広範ではない)場合に出す」
🦉「一部だけ問題がある場合ですね」
💼「次に不適正意見(Adverse Opinion)。GAAPからの逸脱が重要で、かつ広範に影響している場合。『この決算書は適正ではありません』とはっきり言う」
🦉「それは……かなり厳しいですね」
💼「最後に意見差控え(Disclaimer of Opinion)。これは少し毛色が違う。十分な監査証拠を入手できなかった場合に、『意見を述べることができません』と表明する」
🦉「意見を言えないケースもあるんですか」
💼「たとえばクライアントが重要な書類へのアクセスを拒否した場合。調べられなかったものについて、適正とも不適正とも言えないだろう?」
カイロウは表を見ながら整理した。判断の軸は2つある。
- 問題の原因は何か?(GAAPからの逸脱 or 証拠の入手制限)
- その影響はどのくらいか?(重要だが広範でない or 重要かつ広範)
🦉「つまり、原因と影響の大きさの組み合わせで、意見の種類が決まるんですね」
💼「その通り。これが意見の修正(Modification of Opinion)の判断フレームワークだ。監査人としての最も重い判断の1つだから、しっかり理解しておけ」
📖 今日学んだこと
クライアントとの意見の相違が生じたとき、監査人はどう対応するのか。これから学ぶインプットでは、限定意見・不適正意見・意見差控えの判断基準と報告書の記載方法を詳しく見ていこう。